2006年9月3日日曜日

「冥王星」問題

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冥王星について何か書けと言われた。そういえば少し前に冥王星について書いた事があった。そのときに「冥王星を惑星とするには足りない物があるような気がする」と書いていて、タイムリーといえばタイムリーだったこともあるのだろう。

冥王星が発見から75年後にして惑星から外された。

確かに、個人的にも冥王星を惑星と呼んでいいものなのかどうかは以前から疑問であったが、まさかこういう会議で正式に除外されるとは夢にも思ってはいなかった。

散々言い尽くされたことでもあるが、冥王星を惑星から外したのは天文学的な問題というよりも、どちらかというと人間側の勝手な都合によるものだ。別に新しい発見があったとかその結果をうけてでのものではない。

議論の経緯について軽く触れるが、どういうことかと言うと新たに発見された太陽系内の天体を「惑星」とするかどうかという議題に対して、今までなかった惑星の定義を新しく定めて考え直してみたらそれが「冥王星」にも抵触してしまい「惑星」の下の「矮惑星」というクラス(階級)に落ちてしまったということだ。

つまり厳密に言えば議会で決まったのはこっちの「惑星」に関する定義の方であり、冥王星が除外されたのはその結果をうけただけということも言える。同時にカロンという外冥王星天体もこれで惑星から外されてしまったからだ。

新しく出来た、その「惑星」の定義である。

1 太陽を周回している。
2 自身の重力作用で固まり、球形である。
3 当該天体の軌道周辺で圧倒的に大きい。

この三番目に抵触してしまうのだ冥王星は。そのほとんどを太陽系惑星の最外周を周回している冥王星ではあるが、ときに海王星と周回軌道がかぶったり、内側になってしまうことが今では明らかである。

1に関しては言わずもがなである。歴史的な定義であり、この部分は弄れない。たしえばここに「真円状の」とか、「同一周回面上」という一語を付け加えることも出来たはずだかそれはしなかった。

2であるが、これは最近の天文学の進化で明らかになった太陽系とその惑星の生成から逆に導き出した定義という言い方もできる。

なぜこの2が必要かというと、これで小惑星すべてが落とせるからだ。もし仮に太陽系内に新しく、比較的大きな小惑星が発見されたときの為の対策と考えると解りやすいかもしれない。事前に手を打ったという言い方もできる。今回俎上になったもうひとつの惑星候補「セレス」という小惑星帯最大の小惑星を落とすための口実という言い方もできる。

さて3番目である。意地悪く言えば、冥王星を落とすためだけに付け加えた「定義」といえなくもない。が、なぜこのような定義を付け加えなければならないかといえば1の定義を弄れなかったからだろう。

これでわかってしまう委員会の言い分がある。つまり「歴史的に、今までは1と2の定義でやってきましたがこの度は3を付け加える事となりました。」ということで、「別に間違っていたわけでも、今まで怠慢だったわけではないのです」という言い逃れをしているという邪推だ。

冥王星の立場からすれば、何十億年も太陽の周りをずっと周回していたわけで、誕生して数千万年、文明らしきものをもったのが数千年、やっとみつけて75年ちょっとの地球上の生物に「オマエは惑星ではない」と言われても「それがどうした」という気分であろう。そんなことをいったって冥王星自身はいままでかわらずに太陽の周りを周回しつづけているのだ。

こんなことが議題になるもの、まだ人類の宇宙学がまだはじまったばかりであるという証左という言い方も出来る。これがもし太陽系以外の恒星系にまで学問の範囲が及んだときにどうなるかというとそれはまだまだなんともいえないだろう。

もし仮に、どこかの別の恒星系で完全な形での二連惑星のようなものが発見されたときに、この三番目の定義は意味を成さなくなる。そのときにどうするかだ。再びこの同一軌道という定義自体を新しく定めるのであろうか。その時が来るのが楽しみではあるが、そのとき自分はもう生きてはいまい。どう考えても数百年以上も先の話だからだ。


それにしても、この件に関する日本のマスコミの取り上げ方はかなりおかしかった。
なにを話題にして、なにを問題視しているのかがピンボケで、ほとんどのひとが的外れなことばかり言っていた。マスコミのピンボケ振りは珍しくもなんともないが。

笑ったのは、占星術師の元に押しかけていって「冥王星」が「惑星」でなくなることの影響を聞いていたことだ。馬鹿馬鹿しさも極めればお笑いになるという見本みたいなものであった。

考えてみろ、75年前に冥王星が発見される以前ずっとずっとその前から占星術はあったのだ。占星術の歴史に較べれば「占星術における惑星冥王星の存在」などちっぽけなものだ。もし真面目な顔して「影響はありますねぇ」なんて答える占星術師がいたら自分で自分のいかがわしさを表明しているようなものだ。いねーよ、そんな奴。

少し真面目に考えてみよう。占星術における冥王星の「惑星」としての特徴であるが、地球から見た場合の視差がほとんどないということがある。地球からものすごく離れた位置をゆっくりと周回しているためだ。

地球と比較的近い位置を周回している金星や火星は(地球との)周回差があり、太陽をはさんで向こう側にあったり、すぐ近くを通り過ぎて行ったりするために数年に一度「大接近」だとかいって大騒ぎするのとはまったく無縁で、冥王星は地球が太陽のどのあたりを回っていようとあまりにも遠すぎて見かけ上の位置はほとんど変わらない。もちろん視差と言っても肉眼で見ることなどは出来ないが。

発見までに何十年もかかったのもそのせいである。いくら望遠鏡が発達しても世界中の天文学者が血眼になって探してもなかなか発見できなかったのも他の恒星との位置関係が変化してくれなかったためだ。

また、地球から見た位置が「黄道」という太陽の通り道からかなり離れている。その他の惑星がその黄道の近くをいったり来たりしているのとは大きく異なる。

自分が占星術に興味を持ち出したころ(1975年ころだ)、冥王星は見かけ上、乙女座と天秤座のあいだくらいのところを行ったり来たりしていた。1999年はいて座にあった。なんでそんなことを覚えているかといえば、例の「グランドクロス」があった年だからだが。

今、冥王星はたぶん(これは推測だけで書いているのだが)いて座と山羊座の間あたりにあるのではないだろうか?そんなにおお外れはしていないはずだ。というのも冥王星の位置というのは単純な年進計算で割かし簡単に出せてしまうからである。約30年かけて90度しか変化しない。それが占星術における冥王星なのである。

占星術師たちがそんな冥王星に大きな意味を持たせるはずはない。何故ならそれこそ自分の首を締めることになるからだ。

というよりも、実際にいるのだな、大きなる誤謬を犯している占い師達が。しかもいい気になって人間を幾つかのタイプに分けて「冥王星人」とか名前をつけたりしている大馬鹿占い師がいるのである。本来ならばマスコミが押しかけなければならないのはそいつらのところだろう。

なんでそんな馬鹿なことをしでかすかといえば、最近の占い師たち、天文の勉強が絶対的に不足しているからだ。(というか天文の勉強に真面目に取り組めば占星術などという馬鹿馬鹿しいことなどやる気にならなくなるはすだという突っ込みはなしである)

まず大体にして、大昔の占星術師と違って自分達で天体観測をする必要がなくなったことがある。それどころか15世紀と違って今では何百年先の惑星の位置ですら正確に計算可能になった。そのことがいいことなのかどうなのかという価値判断は置いとくとしてもだ、近年の占い師の頭の中にあるのは実際の天文とは切り離された、バーチャルなゾディアック(天宮図)であり惑星の配列でしかない。

そんなもので何かを占うというのは実に空しいことののはずだ。

自分が世に多くいる占星術師に向かって「占星術なんて馬鹿馬鹿しいから止めろ」とか、人に向かって「占星術なんてニセモノだからそんなもの信じるな」と大声で宣言するものではない。ないが、最近の若手の占星術師に対しては「もっと天文についての勉強をしなさい」と言いたい気持ちはものすごく大きい。「キミたちはものすごい楽をしてはいまいか」と。

そして世の人に対しては占星術というものの限界についてもっと強く主張したい気分である。

そしてそして、朝の番組などで「今日の星占い~」とかいってたった12通りのアドバイスしか提示していないテレビ局に対しては、この犯罪的な行為に対してどうやって対抗策を講じてやろうかと(笑)頭を痛めている最中なのである。

本当に、頭が痛い。

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